居久根(屋敷周りの林)の木を除染で伐採したのが、原発事故3年半後の平成26年秋。除染のためとは言え、先祖が「子孫のために」と夫が生まれてから植えて60数年。それが家を建てるためにではなく、除染のために切られてしまった。あとは朽ちるだけで、薪にもならならいかもしれないと思ったら悔しくて涙が出た。
縁あって、伐採木の線量を測ることができた。伐採した木を建築材として使っていいのかどうか環境省にも確認に行った。その木を使って「復興のシンボルになる家を建てましょう」と言ってくれた建築会社の社長に出会った。すべて、ご縁のお陰で、使った木の殆どが飯舘村の自宅の木。角材を壁にした“縦ログ構法”で作った。
確かに、使用した木の心材にはセシウムが存在するが、その量は僅かで、住んでも年間わずか0.073msv/年増えるだけ。「お孫さんが来ても大丈夫ですよ」と放射線防護の専門家が言ってくださった。部屋からは流星が見える。30年前に作りたかった家が、こんな形で実現した。