~あの日から~語り継ぐ ②

【第2回相馬市の税務署へ向かう】

 地震の直後に車で家を出て、県道で相馬市の税務署に向かった。途中、道路に石がゴロゴロ落ちていましたね。大きな石が落ちているところが5か所ぐらいあった。幸い、落ちた石は反対車線に転がっていた。
その時思ったんです。プリンターが紙詰まりを起こさなかったら、これにぶつかっていたかもしれない。助かったわぁ、と。

 相馬市に入ったら、塀が倒れていたり、家が壊れていたり。税務署に着いたら、書類はメチャクチャに落ちていて、職員が右往左往しているんですよ。

 「すみません、確定申告の書類で」と言ったら「後で」と言われた。そこで「いやいや、廃業手続きはどうしたらいいんですか」と、相談したんです。手続きの紙をもらいました。ちゃんと応じてくれました。

 次に社会保険事務所に行きました。「国民年金の証明書がほしいんです」と言ったら「停電でパソコンが動かない」と言われて、初めて停電だと分かった。税務署でも電気はついていなかったんだけど、停電だとは思ってなかったんです。

 飯舘村を出るときから車のガソリンがギリギリだった。いつもガソリンを入れるスタンドが鹿島(南相馬市鹿島区)の国道6号にあるんですが、停電だと聞いたので、飯舘村に戻ろうと考えを変えました。

 帰りは、国道115号バイパスがすごい車だった。私が相馬に入ったころはまだ、津波は来てなかったんです。帰りは津波が来た後だった。でも、私はその車の列を見て、国道6号が地震でやられたと思った。津波は全然、考えてなかった。

 落石はどうなっているかと思いながら走っていたら、1時間半ぐらいの間に、なくなっていた。本当に驚きましたよ。後で、役場に行ってほめたんですよ。「見事に石がなくなっていた」って。

 (東京新聞 2014年4月30日掲載)

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